2025年の不適切会計・不正会計事例まとめ|リスクと対策を解説

株式会社エアー マーケティング担当

はじめに

不適切会計は、粉飾決算や横領のように意図的であったかに関わらず、企業の信頼失墜や経済的損失の大きなリスクとなります。近年は不適切会計が増加傾向にあり、2024年度は上場企業の開示が過去2番目の件数となっていました。※1 2025年度は一転、前年度35社(前期比47.7%減)、41件(同38.8%減)と大幅に減少し、監査機能の強化などの効果が指摘されています。※2 その一方で、複数の大手企業による巨額の粉飾決算も公表されています。

本記事では、本サイトで取り上げた2025年の不適切会計の事例を振り返り、対策方法についてご紹介します。様々なケースを想定し内部統制やガバナンスの強化に役立てて頂くため、意図的な不正会計だけでなく、法解釈の違いに起因すると企業が申し立てているケースについても紹介します。

不適切会計と不正会計について

不適切会計とは、「意図的であるか否かにかかわらず、財務諸表作成時に入手可能な情報を使用しなかったことによる、又はこれを誤用したことによる誤り」(監査・保証実務委員会研究報告第25号)のことを指します。財務情報が結果として適正に表示されていない状態です。
不正会計とは、以下のように不適切会計を原因別に見た時の一つと考えることができます。

意図的な不正(不正会計):粉飾決算・横領など、故意に財務情報を歪める行為。
例)収益を先行計上し当期売上を過大計上、架空支出を計上し私的に流用
裁量・解釈に起因する不適切会計:会計基準の解釈相違や過度な見積り、利益調整などグレーゾーンの問題
例)回収見込みが不確実な売上を早期に認識
誤謬・統制不備による不適切会計:単純ミスや知識不足、内部統制の弱さによって発生する誤り
例)減価償却費の計算ミスにより費用を過少計上

2024年の不適切会計ニュース
(過去に本サイトで紹介した記事より)
日付企業・組織名概要
(確認されている影響)
2025/1/10みなと塩釜魚市場卸売会社が架空名義の会社を通して販売代金の一部約2億を支払い、
消費税や施設利用料を未納付。
市場の使用停止1か月間の行政処分や3500万円の追加徴税。
2025/1/14SCREEN セミコンダクターソリューションズ社
(SCREEN ホールディングスの子会社)
半導体製造装置の売上を前倒して計上。
2024年3月期が合計59億円の過大計上に。
影響は限定的として決算は訂正せず。
2025/1/28エイチ・アイ・エス社コロナ禍の休業中に社員が業務を行い、
雇用調整助成金(雇調金)を不正受給。
受給した約242億円のうち約62.5億円を返還済み。
2025/1/29アミックテレコム社債務超過の中、虚偽の決算書で銀行から約12億円の不正融資を受ける。
出資していた美容専門学校も閉校に。元社長は懲役7年の判決。
2025/3/14いまむら病院架空請求書を作成し、補助金4億5400万円を不正に受給。
県は交付した補助金の全額17億6500万円の返還を要求。
2025/3/17SBI BITS社
(SBIホールディングス子会社)
法人税など約34億円の申告漏れ。「連結納税制度」により、
親会社のSBIホールディングスが追徴課税約2億円を支払う。
2025/3/19埼玉県和光市20年間に渡り介護事業者に単年度に支払う給付費の不足分を
次年度の介護保険特別会計から流用し、決算書を改ざん。3億円の損害。
2025/4/16CyberOwl社
(サイバーエージェント子会社)
事業担当と経営管理担当を兼ねる取締役が不正な売上高を計上、
最大17億5900万円の損失。取締役は解任。
2025/5/9苫小牧信用金庫元理事らによる、法令で禁止された不動産関連事業や子会社の隠蔽、
非上場株式の不当な薄価売却など。
北海道財務局が業務改善命令を発出し代表理事らが引責辞任。
2025/5/26RiSSHi社クラウドファンディング資金約1億円を経理担当社員が無関係の投資に流用。
この問題でプロジェクトは中止に
2025/5/30いわき信用組合ペーパーカンパニー3社を通じ、預金者の口座に架空融資。
不正融資の累計額は20年間で少なくとも247億円。反社会的勢力との取引も含まれる。金融庁は一部業務停止命令を発動
2025/6/6ANAホールディングス社他、傘下の4社未認可・無届けで運賃や手荷物の料金を変更。
過大受け取の総額はおよそ49億円。貨物便の約9億4千万円は返還済み。
2025/7/7群馬県吹奏楽連盟、群馬県中部地区吹奏楽連盟1人で会計業務を担当していた両連盟の事務職員が、
銀行から計約1,650万円を引き出し自営業の資金として利用。
2025/7/29オルツ社循環取引によって売上の約8~9割にあたる111億円を架空計上。
虚偽の有価証券報告書などを作成。社長らが逮捕・起訴され、上場廃止。
2025/8/14ガンホー・オンライン・エンターテイメント社元幹部が約2.4億円を自身に架空発注し着服したほか、
業務実態のない取引先に約1億円を不正支払い。役員報酬を減額。
2025/8/20JR東日本メカトロサービス社
(JR東日本子会社)
グループ会社から受注した工事代約80万円を前倒し計上。
工事に関する報告書も改竄。発覚後、両社は決算を修正処理
2025/9/4ニデック社経営陣が関与する不適切な会計処理を疑わせる資料が見つかり、
第三者委員会を設置。11/14に876億円の損失計上、
2026/3/3に約2500億円の減損損失などを公表し、名誉会長が辞任
2025/10/10エア・ウォーター社連結子会社の自主点検で損失計上を先送りする不適切な会計処理が発覚。2026/2/13にはグループ計37社で総額209億円にのぼることを公表、
社長が辞任
2025/10/24かんでんエンジニアリング社従業員らが警備員数や警備時間を書き換え、費用を水増し。
内部通報で発覚。社員5人は計約600万円の「キックバック」現金や、
接待を受けていた
2025/10/31リック社
(東リ連結子会社)
工事採算割れを回避するために取引業者に架空の請求書を書かせ、
約1億1,500万円の損失
2025/11/5ジェイアール東日本企画社
(JR東日本子会社)
国からの受託事業83件で人件費を水増し請求、19.9億円を不正受給。
発覚後は、不正受給分の全額返還が行われているほか、
社長辞任や親会社のJR東日本社で役員報酬返上など
2025/12/18味の素社連結範囲の判定の誤りで海外現地法人の所得を合算していないなどで、
3年で150億円の申告漏れ。また「タックスヘイブン対策税制」により
約13億円の追徴課税。同社は全額納付も不服として審査請求
2025/12/22楽天カード社債権を活用した資金調達に関する消費税4年間で
42億円の申告漏れがあったとして、追徴課税。
同社は全額納付も不服申し立て。
リスクと対策

不適切会計・不正会計は様々なリスクを伴います。追徴課税や被害を被った第三者からの損害賠償請求といった法的制裁だけでなく、社会的な信頼喪失による株価の急落や資金調達の困難化を引き起こします。最悪の場合、倒産や買収など企業の存続に関わる問題に発展することもあります。これらのリスクを最小にするためには、様々なケースに備えてコンプライアンスを強化し、未然に防止したり早期発見できる仕組みづくりが必要です。

特に近年は、不正会計が単独の担当者だけでなく、売上目標への過度なプレッシャーや「以前から続いていた慣行」など、組織全体の問題として発生するケースも少なくありません。また、不正の多くは契約書や会計帳票だけでは見抜きにくく、メールやチャットなど日常のコミュニケーションの中に兆候が現れることもあります。そのため企業には、ルール整備や研修だけでなく、内部通報制度の活用、定期的な監査、データ分析を活用したモニタリングなど、多面的な不正防止策が求められています。問題発生後の対応だけでなく、平時から異常を早期に把握できる体制を構築することが、不正会計リスクの低減につながるといえるでしょう。

まとめ

本記事では、2025年に公表された不適切会計事案のうち、本サイトで取り上げた事例を対象に整理しました。ここで取り扱った事例は、意図的な不正から、会計処理の判断や解釈、さらには誤りや内部統制の不備に起因するものまで、多様な形態を含んでいます。長期間にわたり不適切な処理が継続していた事案や、特定の担当者に業務が集中していたことで発覚が遅れた事例、内部通報や外部調査を契機として問題が顕在化したケースなど、不適切会計が発生・発見される過程もさまざまでした。不適切会計は必ずしも単一の要因で発生するものではなく、業務プロセス、組織体制など複数の要素が絡み合っています。本コラムで取り上げた各事例が、実務における留意点や内部管理体制の見直しを考える上での参考となれば幸いです。

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