2025年の品質不正を振り返る(事例一覧付き)

はじめに

近年、検査不正やデータ改ざん、表示偽装などの品質不正が相次いで公表され、企業の品質管理体制やガバナンスのあり方が改めて問われています。

2025年も、メーカーを中心に品質に関する不適切行為が公表されました。品質不正の発生件数や発覚件数を網羅的に集計した統計は確認できませんが、大きな社会的関心を集めた2024年と比べて、品質不正の公表事例は相対的に少なくなったように見受けられます。

もっとも、公表事例や報道件数の増減だけで品質不正の実態を判断することはできません。
日本能率協会総合研究所(JMAR)が2025年に実施した調査では、製造業の上場企業で生産・製造や開発に携わる従業員の約3分の1が、自社で品質不正が「あった」または「あるかもしれない」と回答しています。
また、品質に関する不適切な行為を目撃した人や、内部通報を検討しながらも実際には通報しなかった人も少なくありません。公表件数が少なく見えることと、現場に品質不正のリスクがないことは、必ずしも一致しないのです。

品質不正は、一度発覚すると顧客からの信頼喪失企業イメージの低下にとどまらず、製品の出荷停止行政処分売上減少経営陣の処分など、企業経営に大きな影響を及ぼします。

以下では、2025年に公表された品質不正・品質管理上の不適切行為のうち、「メールと企業リスクの情報サイト」で取り上げた主な事例を紹介するとともに、企業が取り組むべき対策について解説します。本記事が、自社のリスク点検や品質不正の未然防止に向けた取り組みを進める一助となれば幸いです。

(事例の対象範囲や影響は、各社・関係機関の公表内容に基づくものであり、本一覧は各年の全事例を網羅するものではありません。)

2025年の品質不正事例一覧
公表日企業・組織名概要
(確認されている影響)
2025/4/4三井金属パーライト社
(三井金属子会社)
検査成績表のデータを書き換え、規格・仕様を満たさない製品を出荷
2025/5/14三菱製紙社およびグループ会社品質試験・検査の数値改ざんなど
 ➡役員報酬の一部返上など
2025/6/17日本郵便社未実施または不備のある点呼記録10万点余りのデータ改ざん
 ➡貨物軽自動車運送事業の
  許可取消処分、役員報酬減額
2025/8/18コンビニチェーン「ミニストップ」消費期限を偽装して販売
 ➡店内調理品の販売を一時停止、
  マイナス37億円の影響
2025/8/29川崎重工社潜水艦用エンジンの燃費性能検査データを改ざん
 ➡約2.5か月の指名停止処分
2025/10/30チヨダテクノル社放射線測定機器の検査を行わず納品(証明書などの偽装)
2025/11/20東北電力社未実施の物質防護設備の性能試験を実施済みとして記録
参考)2024年の品質不正事例一覧

以下では、参考として幣サイトで取り上げた2024年の品質不正事例の一覧を紹介します。

公表日企業・組織名概要
(確認されている影響)
2024/1/12パナソニックインダストリー社
(パナソニックHD子会社)
電子部品材料の認証検査不正
 ➡4工場の国際認証の一部取り消し
2024/1/29豊田自動織機社自動車用エンジンの排ガス性能検査不正
 ➡該当エンジン搭載車の生産停止
2024/4/24IHI原動機社
(IHI子会社)
船舶用エンジンの燃費性能データ改ざん
2024/4/26キョクトウ社「正露丸」などの薬効・品質試験データ改ざん
 ➡23日間の業務停止命令など
2024/5/10三菱製紙エンジニアリング社
(三菱製紙子会社)
変圧器向け部品の検査データ改ざん
2024/6/3トヨタ自動車社、ホンダ社、
マツダ社、スズキ社、ヤマハ発動機社
型式指定申請での虚偽データ提出など
 ➡当車種の出荷停止など
2024/7/5日立造船社船舶用エンジンの燃費性能データ改ざん
 ➡該当エンジンの出荷停止
2024/7/19エーテック社
(岩谷産業子会社)
液化窒素貯槽などの検査書類の偽造
2024/8/9JR九州高速船社船体内への浸水にかかわるデータの改ざん
2024/8/21川崎重工業社船舶用エンジンの燃費性能データ改ざん
 ➡該当エンジンの出荷停止
2024/9/10JR貨物社輪軸組み立て検査のデータ改ざん
 ➡貨物列車の運行一時停止
2024/9/18東京メトロ、京王電鉄のグループ会社、
都営地下鉄・都電荒川線
輪軸組み立て検査のデータ改ざん
2024/9/24JR東日本社輪軸組み立て検査のデータ改ざん
 ➡副社長のけん責処分など
2024/11/29ファナック社EMC不正(負荷条件の不正な選定など)
品質不正の防止策

品質不正やデータ改ざんを未然に防ぐためには、品質管理やコンプライアンスに関する社内教育に加え、現場で生じる違和感や不適切な行為の兆候を早期に把握し、適切に対処できる体制を整えることが重要です。

具体的には、品質部門だけに任せるのではなく、経営層、製造部門、開発部門、営業部門などが連携し、品質に関する課題を相談・報告しやすい環境をつくる必要があります。また、平時から内部監査を行い、記録や業務プロセスに不自然な点がないかを確認することも欠かせません。

特に社内外のコミュニケーションを対象としたメール監査は、不正や不適切なやり取りの兆候を早期に発見する手段の一つです。一方で、メールに潜むリスクや不正行為を見逃さないためには、大量のメッセージを継続的に確認する必要があり、監査業務の負担が課題となります。

株式会社エアーが提供するメール監査システムWISE Auditは、こうした課題の解決をサポートします。

「WISE Audit」は、高速検索機能によって大規模なメールデータから必要な情報を迅速に抽出することができるメールアーカイブ・監査ソリューションです。「AI判定機能」は不正なやり取りの兆候を早期に発見したり、有事のメール監査業務を効率化するなど、監査担当者の業務負担を軽減します。

監査業務には専門的な知見や経験が求められるため、人材不足が課題となっています。しかし、AIを活用することでメールの確認やリスク判定の一部を自動化でき、監査担当者の業務負荷を減らし監査品質の向上を両立することが可能です。

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最後に

2025年は、メーカーによる品質不正の公表事例が2024年と比べ少なく見受けられます。しかし、品質不正の公表・報道された事例の数だけで、品質不正のリスクが低下したと判断することはできません。公表事例の多少にかかわらず、「自社でも同様の問題が起こり得る」という前提で、品質管理や内部統制、監査体制を継続的に見直していくことが重要です。

※出典:株式会社日本能率協会総合研究所「第3回「従業員の品質意識」アンケート調査」https://jmar-im.com/column_qm/qm04/

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