情報持ち出し事件を機に、秘密情報管理の在り方を再確認

株式会社エアー 森 剛

先日、某寿司チェーンを展開する企業の社長が営業秘密を不正に取得し、不正競争防止法違反の疑いで逮捕されました。
この事件で思い出されるのが、某通信会社の基地局情報の漏えい事件です。競合する通信事業者へ転職する際に、個人メールアドレスに大量の秘密情報を送ったことがありました。通信事業者にとって5Gの基地局情報は、通信ネットワークの設計をはじめとした品質向上につながる大切なノウハウです。
一方、寿司チェーン店にとって仕入れ原価や各店舗の売り上げ情報は、繁盛店の詳細を確認するという意味で企業にとって重要な秘密情報と言えるでしょう。

今回のような転職時の情報漏えい事件を耳にするたびに、自社は大丈夫かと心配になる経営者も少なくないはずです。
情報処理推進機構(IPA)の2020年の調査によると、情報漏えいが発生したと回答した企業の漏えいルートは「中途退職者」が一番多く、36.3%を占めるとのことです。欧米に比べまだまだ人材の流動化が弱いと言われる日本ですが、転職する際の情報漏えいには企業側も転職者側も十分な注意が必要です。

このような事件を機に秘密情報管理の在り方を確認していきますと、不正競争防止法で「営業秘密」とされるには以下の3点を満たす必要があります。

  1. 秘密として管理されていること(秘密管理性)
  2. 事業にとって有用であること(有用性)
  3. 公然と知られてないこと(非公知性)

特に1.の秘密管理性が認められるためには、企業の”特定の情報を秘密として管理しようとする意思”が、”具体的状況に応じた経済合理性のある秘密管理措置によって、従業員に明確に示され”なければなりません。結果として、従業員がその意思を容易に認識できる必要があります。
ただし秘密管理を徹底しすぎると利便性が損なわれて日々の業務に支障をきたす恐れがありますので、関係者とよく議論する必要があるところです。

まずは社内の秘密情報管理の実態を把握して、できることから着手していきたいものです。


参考情報
IPA「企業における営業秘密管理に関する実態調査2020」https://www.ipa.go.jp/security/fy2020/reports/ts_kanri/index.html
経済産業省「営業秘密~営業秘密を守り活用する~」、「営業秘密管理指針(平成31年1月改訂版)」https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/trade-secret.html